アルマイトとは?~ なぜ、アルミニウムに表面処理が必要か

1.アルミニウムの表面処理の必要性

アルミニウムの表面は、自然酸化皮膜で保護されているので一般に耐食性がよいといわれています。しかし、この皮膜は非常に薄いので、あらゆる環境に耐えることはできません。自然酸化皮膜が存在するままでもアルミニウムは一般に活性で、湿気や、酸・アルカリの環境では化学反応により腐食してしまいます。

従って、表面加工をする場合には、目的に応じ、表面を保護する皮膜・塗膜をつける必要があります。すなわち、アルミニウムは、自然酸化皮膜のままでは耐食性も十分でなく、また、表面の硬さも十分ではありません。これらを満足するには、人工的な皮膜・塗膜生成のための表面処理が必要となります。

この表面処理方法として、陽極酸化による方法、複合皮膜による方法及び塗装による方法が一般に行われており、最近では、さらに各種表面処理方法等の組み合わせによって、多様化・高級品化・個性化等の試みが多くなってきています。

なお、アルミニウムの性質は、合金化することにより、かなり変化しますが、表-1に純アルミニウムの一般的性質をまとめてみました。

[表-1] 純アルミニウムの物理的・化学的性質一覧表

項目 特性
化学記号 Al
原子量 26.97
原子番号 13
比重 2.70 (20℃)
溶解点 658℃
沸点 2057℃
溶解潜熱 (Cal/g) 94.55
気化潜熱 (Cal/g) 約2,000
比熱 0.21~0.22(0~100℃)
熱膨張係数 2.97×10-5(0~100℃)
熱伝導度 (c.g.s.) 0.48~0.50(0~100℃)
電気比抵抗 (Ωcm) 2.48×10-6 (常温)
その温度係数 4.34×10-3(0~100℃)
空間格子 面心立方格子
反射率 (%) 94~98 (電解研磨)

2.陽極酸化とは

アルミニウムの陽極酸化処理とは、一般にアルマイト処理とも言われており、この方法は、アルミニウムを陽極とした電気化学的方法で人工的に酸化皮膜を生成させる処理をいいます。すなわち、アルミニウムを陽極として硫酸電解液中で、電気分解すると、

陽極反応として、

Al Al3+ + 3e-
OH- O2- + H+
HSO4- SO42- + H+

陰極反応として、

H+ + e- H2

の反応が起こっています。

しかし、陽極における微細孔の内部でも同時に次のような反応が進んでいます。

2Al3+ + 3O2- Al2 O3
Al3+ + So42- Al2(So4)3

すなわち、硫酸根を含む酸化皮膜の生成が進みます。
上記の反応が進んでいる間、アルミニウムの表面で、どのような変化が起こっているのかをモデル的に示すと図-1のようになります。

[図-1] ポーラス皮膜が出来るまでのモデル図
(「アルマイトの話」(東京アルマイト工業協同組合編)より引用)

3.陽極酸化(アルマイト)とメッキの違い

金属を被覆するという意味で、陽極酸化処理とメッキとが、同じように思われていることがあります。しかし、基本的には異なった表面処理方法です。図-2にその違いを示します。

メッキは被加工材の上に異種金属の膜が重なるもので、その分だけ、元の金属より厚くなります。しかし、陽極酸化処理の場合は、アルミニウムを溶かし、その溶かされたアルミニウムがAl2O3という酸化物に変化して酸化皮膜ができるので、皮膜が内部に進行していくという違いがあります。

[図-2] 陽極酸化とメッキの違い

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