粉体塗装

一般的な塗料は溶剤(シンナー等)に塗膜形成成分が溶け込んでおり塗装後、溶剤が揮発して塗膜が形成されます。これに対して粉末状の塗膜形成成分を直接金属に吹き付けるのが粉体塗装です。

粉体塗装は、環境規制が厳しかったヨーロッパにおいて約40年前から採用されていました。わが国でも近年、VOC(揮発性有機化合物:Volatile Organic Compounds)の規制強化による大気汚染防止法改正により今後は、溶剤系塗料から粉体塗料へと移行していくものと考えられています。従来、粉体塗装はガードレールやスチール家具、自動車部品、エクステリア用品など、過酷な使用状況の塗装に多く利用されていました。これらを背景として長期耐久性が要求されるビルの外装などの建築部材への粉体塗装の使用が期待されています。

1.粉体塗装方法

粉体塗料は、塗膜形成成分として顔料や高分子樹脂その他硬化剤などが必要に応じて配合されています。「パウダーコーティング」とも呼ばれるように、塗るというより粉(細かい粒子)で金属をコートするといったイメージです。
主に静電粉体塗装法(吹き付け塗装)もしくは流動浸漬塗装法(浸漬塗装)の方法にて工業化されています。

静電塗装法…
静電ガンを用い、電荷を与えられた粉末塗料を加圧空気により噴霧する。被塗物(金属)をプラスに塗料(粉)をマイナスに帯電させることにより静電気の引力により付着させる。
流動浸漬法…
余熱した被塗物(金属)を、粉体塗料を流動させた容器の中に浸漬する事によって付着させる。 (弊社設備は静電粉体塗装法のため流動浸漬法はできません。)

その後、オーブンで加熱(焼付け)することにより均一な塗膜が形成します。

2.特 徴

①有機溶剤不使用により安全性が高い。
100%固形分の粉末塗料を使用しているため大気中へのVOC放出はあっても非常に少ない量です。したがって、溶剤揮発が原因となる公害問題の発生が少なく、有機溶剤による中毒、火災の危険も少なくなります。
②厚塗りが可能。
粉体塗装の場合1回の塗装で40~150μm程度の塗膜をつくることができます。これは溶剤塗装のおよそ約4~5倍以上の厚みです。高膜厚で形成された塗膜はその樹脂の特性により耐候性や耐食性などに優れています。
③塗料のリサイクルが可能。
粉体塗料は回収再利用が可能なため廃棄塗料の量が低減されることで環境負荷の低減に寄与することができます。ただし、小型簡易設備や多色対応による回収設備の未設置などにおいてはコスト高になります。
④塗料の少量、短納期対応が難しい。
粉体塗料は、製造上の問題により溶剤系塗料のような少量短期納期対応が難しいとされています。微妙な色調の濃淡差を作製するのにも長時間を要します。

3.外装建築分野で要求される粉体塗料の規格分類
AAMAおよびQualicoatとは

AAMA 米国建築製造協同組合(American Architectural  Manufacturing Association)が定めているもので建築用アルミ、アルミパネルの有機塗装に関する自主的規格です。 性能規格ではなく、あくまでも品質を確保するための要求事項と自主的な仕様、試験方法を示したもので、規格のように強制力があるわけではありません。

Qualicoat 1986年に欧州で発足したアルミニウム合金建材塗装品の品質保証のための認定制度で、AAMAとの違いは認証ライセンス評価を第三者機関がすることです。

海外2規格の他に軽金属製品協会より業界規格として2014年に「アルミニウム合金製建築材料粉体塗装性能評価方法」が発行されています。 それぞれの規格において外観、色調、表面光沢、塗膜厚さ、塗膜硬度、初期付着性、耐沸騰水性、耐衝撃性、耐溶剤性、耐アルカリ性、耐中性塩水噴霧性、屋外暴露耐候性などの項目が定められています1)。

注1)粉体塗料規格の詳細は、軽金属製品協会規格「アルミニウム合金製建築材料粉体塗装性能評価方法」参照。

工程概略図

工程概略図:陽極酸化による方法

工程概略図:複合皮膜による方法

工程概略図:塗装による方法

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